わが悲しき娼婦たちの思い出

ガルシア=マルケスの『わが悲しき娼婦たちの思い出』を読みました。






「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」

こんな一文から始まる本作。


老いた男のせつない過去の回顧録の話だと思って読み始めたらそうではなかったです。


14才の貧しい女の子に恋をしてしまった、90才の男性の口から生き生きと語られる、過去、現在、未来について。


老いには外側からの老いと内側からの老いの二種類があると思います。


外側の老いに精神が耐えられなくなって内面も老いていってしまう人が多い気がするけど、この物語の主人公は違う。


老人ゆえに他人にバカにされることもあるけど、それを老いの楽しみだと思って楽しくやり過ごすことの出来るタフさを持っている主人公。


作者のガルシア=マルケスが77才の時に書いた作品ですが、それにしても若い感性に驚きます。


多くの日本人の感覚でいえば、いい年して孫以上年の離れた女の子を好きになるなんてみっともないという感じかもしれないけれど、私は改めて何歳でも人を好きになれるし、何歳の人に恋をしてもいい、と思いました。


タイトルから想像も出来ない、爽やかな5月の風を感じさせるようなこの作品に今出会えてとても良かったです。


20世紀に南米が抱えた歴史の重さも知ることが出来る、さすがのガルシア=マルケスな作品でした。